ゾンビ屋れい也 リルケ編3


明け方、両手に違和感を覚えて目を覚ます。
伸びをしようとしてもうまく動かせなくて、ぼんやりと目を開く。
すると、手首が手錠でまとめられていて、紋章には赤い布が巻かれていた。
何事かと、ベッドから下りようとする。
だが、片足が長い鎖で繋がれていて数歩しか歩けなかった。
嫌な予感が、脳裏をよぎる。

「よぉ、起きたかよ」
リルケが部屋に入ってきて、はっと目を向ける。
「どういうつもりだ、また虐待でもするつもりか」
「そんな子供じみたことするかよ。ほら、声がかすれないようにこれでも飲んどけ」
リルケが、れい也に水の入ったコップを手渡す。
警戒したが、寝起きで喉はだいぶ渇いている。
れい也は繋がれたままの手を何とか動かし、一気に飲み干した。

「昨日、ゾンビにはつとまらねえことがあるって言ったの、覚えてるか」
「ああ、まあ・・・」
リルケはにやりと笑み、突然れい也をベッドに押し倒した。
コップが床に落ち、割れてしまう。

「それはな、性欲処理することだよ。さすがに、ゾンビに突っ込む気にはならねえからな」
信じられない答えに、れい也は目を丸くする。
嫌な予感が、現実味を帯びる。

「百合川!」
れい也が百合川を呼ぶが、何も起こらない。
まさかと思い布を引っ掻こうとすると、リルケが手首を掴み阻んだ。
「紋章を封じる特殊な布だ、効果てきめんだな」
百合川が呼び出せず、れい也の血の気が引く。
獲物を捉えた肉食獣のように、リルケは舌なめずりをした。


「・・・やっぱり、また切り刻むつもりか」
「違えよ。使うのはナイフじゃねえ」
リルケはれい也のバスローブを剥ぎ取り、何も身につけてない状態にする。
本気だと察し、寒気が全身を襲った。

「ほら、コイツをお前のために買ってやったんだぜ」
リルケは服のどこからか、指二本分くらいの太さの小型の器具を取り出す。
スイッチを入れると、ブーンと振動する音がした。
そして、それをおもむろにれい也の性器へ当てる。

「あ・・・!っ、あ・・・」
突然の刺激に、驚愕交じりの声が上がる。
萎えきっているところへ、無理やり刺激が与えられて
細かな震えは感じたことのない感覚に変わり、れい也を攻め立てた。

「少し当てただけでこれかよ。早々にイくんじゃねえぞ」
リルケは一旦器具を離し、次の場所へ近付ける。
さらに下方にある、敏感にものを感じる秘部へ。

「や、めろ・・・」
「ろくに使わねえまましまい込むなんて、勿体ねーだろ」
リルケは、れい也の窪まりへ振動を当てる。

「うっ・・・く、うぅ・・・」
こんなこと、下手に傷つけられるよりタチが悪い。
触れられたことのない場所への刺激を受け、れい也は奥歯を噛み、声を殺す。
足を閉じて振動を弱めようとしたが、リルケが膝で太股を割って止める。
「振動があれば早く緩みそうだなァ。ほら、声出してみろよ」
リルケは力を込め、震えるそれの先端をれい也の中へ埋めた。

「うぅ・・・っ!」
内側から振動が伝わり、さらに刺激が強まる。
誰が望みどおりにするものかと必死に耐えたが、声だけを抑えても体への刺激は変わらない。
先端がわずかに埋められただけでも、初めて物を受け入れる場所は敏感に収縮する。
止めようと反射的に動くのだけれど、余計に振動を感じやすくするだけだった。
リルケは、器具を更にれい也の中へ進める。

「っ・・・ぐ、う・・・」
器具は全体が震えていて、奥へ進めば進むほど振動を感じる範囲が広くなる。
大きく息を吐いて熱を吐き出したいが、きっと声も一緒に漏れてしまう。
どんなに強制的な行為でも、与えられる刺激には逆らえなかった。

「懐かしいな、お前をこうしてまた押し倒してよ」
「最初、から・・・こうするつもりだった、のか・・・っ」
「最初?どこから言ってんのか知らねえが、教えてやろうか?俺がいつからお前をこういう目で見てたのか」
恐ろしすぎて、れい也は弱弱しく首を横に振る。
怯えている様子を見て、リルケは楽しそうに口端を上げた。
昔はただ傷をつけるだけだったが、そんな単純なことよりもいい楽しみ方がある。
気付いたとき、れい也を蹂躙したくてたまらなくなっていた。

簡単に達しないよう、器具は入れているだけで動かさないでいる。
この先は、もっと興奮することが待っているのだから。


しばらくの間、器具はれい也の中に埋められたままだった。
動かされなかったおかげで大きな衝撃はないものの、性器は完全に起立している。
「そろそろ、イイ具合になってきたみてえだな?」
れい也の様子を見て、リルケは愉快そうに言う。
呼びかけられても、れい也は決して目を合わせようとしない。
リルケは器具のスイッチを切り、秘部から抜く。

「っ・・・は・・・」
刺激がなくなり、ようやくまともに息を吐く。
窪まりは収縮しようとするのだが、振動を受け続けていたせいで思うように力が入らない。
緩まってしまったことを自覚すると、れい也は泣きそうな気持ちになった。

「ただ痛いだけよりいいだろ?ここからは俺も楽しめることだしな」
リルケはズボンのベルトを外し、金具も取る。
「まさか・・・嘘だよな?そんな、男で、兄弟で・・・」
「今更、おさめられるわけねえだろ」
れい也が快楽を堪える様子を見て、リルケのものはとっくに肥大している。
それをきつい衣服から解放すると、れい也ににじり寄った。

「ど、どうかしてる、何で、そんな状態になるんだっ」
「うるせぇな、お前はただ喘いでりゃあいいんだよ」
リルケの先端が、器具が埋められていた個所に触れる。
ひっ、と息を飲んだ瞬間、それは中へ押し進められた。

「い・・・!う、あ・・・!」
器具よりもさらに太いものが、窪みを一気に圧迫する。
引き裂かれるような痛みに、れい也はくぐもった声を上げた。

「きっつ・・・結構、緩んだと思ったんだけどな」
窪みは、異物を拒否するようにしきりに閉じようとする。
だが、リルケは腰を落としじわじわとれい也を侵食していく。

「止めろ・・・っ、離れ・・・」
「ああ?もっとイれて欲しいの間違いじゃねえのか。感じてんのは、痛みだけじゃねえだろ」
元々合意なんて望んでいない、リルケはお構いなしに自身を進めて行く。
「う、うぅ・・・っ」
ほんの数センチ埋められただけでも、窪みは痛みを伴って熱くなり、しきりに縮こまる。
どんなに体が抵抗しても、一向に身が引かれる気配はない。
圧迫感は徐々に強くなり、呼吸が荒くなる。
だが、ズキズキとした痛みは確かにあるものの、それは他の感覚で薄れてくるようだった。


「っ・・・ほら、見てみろよ。こんなに深く咥え込んじまってよ」
誰が直視するものかと、れい也は決して視線を動かさない。
けれど、感じてしまっていた。
お互いの下腹部が触れ合い、体がリルケを飲み込んでしまっていることを。

こんなこと、夢の延長線上であってほしいと何度願っただろう。
リルケのものを受け入れ、繋がっているなんて。
呼吸をするたびに、自分の最奥で他人の熱を感じてしまう。
それは完全に根元まで埋められ、離れがたい状態になっていた。

「お前も、もうだいぶ慣れてきたんじゃねえか?このまま、しばらく繋がったまんまでもいいかもなァ」
一分一秒でも早く離れてほしいのに恐ろしいことを言われ、れい也の恐怖心はピークに達する。
そんなとき、れい也の額にかかっている前髪を払おうと、リルケが手を伸ばす。
その指先が触れた瞬間、れい也の脳裏に過去のことがフラッシュバックした。
痛みを与えられ、怯えていたトラウマが鮮明によみがえる。

「や・・・だ・・・お願いだから、止めて・・・兄さん・・・」
最後の単語に、リルケはわずかに動向を開く。
幼少期以来、れい也に兄と呼ばれたことはなかった。
その呼び方はリルケにも過去を思い起こさせ、自然と身を引いていた。
聞き入れられたのかと、わずかな希望が生まれる。
だが、次の瞬間、身を引いたリルケはそれを抜く前に、一気にれい也の奥へ押し進めていた。

「ああぁっ!」
悦楽の衝撃が体を襲い、れい也は全身を震わせた。
最奥を突き上げたものは再び身を下げるが、やはり抜かれることはなく押し入れられる。
急激な前後運動を止めてくれと、秘部は必死に収縮するがまるで無駄だ。
抵抗をものともせず、リルケは腰を激しく動かしれい也を攻め立てていた。

粘液の絡みつく卑猥な音が、耳にまとわりつく。
中のものが大きく前後に動かされ、じりじりとした痛み以上に感じるものが強くなる。
体が、リルケを受け入れようとしていた。

「や、やだ・・・っ、兄さん、止めて、兄さん・・・!」
訴えは、逆に煽りに変わる。
リルケはれい也の両方の太股を持ち上げ、さらに激しく突き上げた。
「ああ、う、あっ・・・!」
れい也の最奥を犯し尽すよう、浅く腰を引き深く押し入れる。
何度も何度も下腹部が押し付けられ、肉が重なる音が響く。

「あァ、れい也、もっと呼べよ、俺のこと、そうやって呼んでみろよ・・・!」
過去にれい也を傷付けていたときの昂揚感と、今の性的な昂りがリルケを興奮させる。
蹂躙したときだけ、この弟は素直にそう呼ぶ。
兄と呼ばれる度に高揚感が増して、笑みを抑えられなかった。

他の相手の名前なんて呼ばないよう、支配したくてたまらなくなる。
その体が、自分の肉の熱を忘れられないよう、刻み付けてしまいたくなる。
リルケは、衝動のままにれい也の中を繰り返し犯し続ける。
抵抗する収縮さえも心地よく、悦の感覚を助長した。


何十回、肉がぶつかり合い卑猥な音をたてただろう。
達した時に最も自分を強く感じさせられるよう、リルケは重点的に奥を突く。
息も絶え絶えなれい也は、もはや肉体的にも精神的にも限界で
最奥が突き上げられた瞬間、強い衝動が全身を走った。

「ひ、あぁっ・・・!あ、あ、兄、さ・・・ああ・・・っ!」
びくびくと体が震え、とうとう淫欲が解放される。
リルケを受け入れている個所は同じ快感を与えようと、今まで以上にきつく締め付ける。
かなり強まった圧迫感に、流石のリルケも顔をしかめた。

「よっぽど、俺のが欲しいみてぇだな・・・ッ」
最もきつく締め付けられ、ほぼ同時にリルケも達する。
それは心音に合わせてれい也の中で脈動し、欲情をそのまま吐き出した。
どろりとした白濁が、繋がり合ったままの最奥へ流れ込む。
リルケの脈動は強く、そのたびに欲が注ぎ込まれていた。

自分が散布した液体と同じものがこの身に吸収されてしまったのだと思うと、れい也は軽い絶望感にとらわれる。
絶頂が過ぎ、全身から力が抜け、足はだらりとベッドの外へ落ちる。
収縮する力も弱まり、リルケは徐々に自身の身を抜いて行った。
異物がなくなり、窪まりはようやく解放されひくひくと動く。
けれど、奥の奥に注がれた液を出す力はなく、下腹部の違和感は消えないままだった。

「なァ、痛いだけじゃなかっただろ・・・?ガキの遊びよりこっちの方がイイな」
完璧な強姦をしておいてぬけぬけと言うリルケが、心底憎くなる。
れい也は、ちらと床に散らばっているコップのガラス片を見た。

「気持ち・・・悪い・・・最悪だ・・・こんな行為も、お前も・・・!」
れい也は足の指でガラスを蹴飛ばし、自分の手めがけて放る。
そして、運よく布に刺さったガラスを、不自由な手で掴み布を引き裂いた。
行為の余韻に浸っていたリルケは、一瞬反応が遅れる。

「来い、百合か・・・」
もう一文字、言い終えれば召喚できるはずだった。
だが、その寸前に、リルケは身を乗り出してれい也を覆い、その口を自らの唇で塞いでいた。
「う・・・!」
声を押し戻すよう、迷わず舌を押し入れる。
避けようとするれい也を捕らえ、強く絡ませ言葉を封じた。

まだ体が敏感なままで、下半身が疼く。
息が整わないさなかに塞がれ、縦横無尽にリルケの舌が口内を這う。
行為の後でいくら喉が渇いていても、こんなものは飲みたくはないのに
入り混じった唾液が喉の奥に溜まり、反射的に喉を鳴らしていた。

抵抗する余力はことごとく奪われ、れい也はリルケにされるがままになる。
逃れることを諦めかけてきたところでリルケが舌を引き、唇を離した。

「俺を殺したら、お前は帰れなくなるぜ。この城は崖に囲まれてる、俺の翼竜がいないと戻れねえ・・・」
リルケは至近距離で、説得するように囁く。
それが、百合川を召喚させないための嘘か、本当か確かめる術は、麻痺した脳では思いつかなかった。
れい也は唇を結び、閉口する。
百合川を呼び出さないとわかると、リルケはふいにれい也を抱き寄せた。

「イイ子だ、れい也。従順にしてりゃあ、お前を傷付ける奴は俺だけになる。わかるだろ?」
わかりたくない、と言い放ってやりたくなる。
完全に、身勝手な独占欲。
だが、この腕の中に居れば、脅威は全て跳ね除けてくれるのだろうか。
一つの痛みさえ耐えていれば、他の要因で苦しむことはなくなるのだろうかと、おぼろげな思考で考える。
そんなことを思ってしまうのは、まだ思考回路が麻痺しているからに違いなかった。